医療者に対するアドボカシー教育の実施状況調査
研究概要
「アドボカシー」とは、患者や子ども、その家族の「こえ」をくみ取り、必要な支援や制度につなげるために行動することです。特に小児医療では、診察や治療だけでなく、子どもの育つ環境や学校、福祉、地域社会などに関連する身体的、心理的、社会的課題にも目を向け、解決にむけて様々なステークホルダーと協働する役割が求められています。海外では、こうした力を育てる教育プログラムが構築されていますが、日本では、標準的な教育がまだ十分に整っていません。そのため、意欲のある指導者や施設が個別に工夫している一方で、学ぶ機会や教育内容、評価方法にばらつきがあると考えられます。
そこで本研究では、まず全国の小児科専門研修プログラムを対象に、アドボカシー教育が行われているか、どのような目標や内容で実施されているか、どのような障壁があるかを質問紙調査で明らかにします。次に、実際にアドボカシー教育を行っている医療者にインタビューを行い、教育内容や、導入を進めるうえでの障壁や促進要素、今後の展望などを整理します。
さらに、その結果をもとに、日本の医療現場や地域の実情、文化的背景に適したアドボカシー教育のあり方を検討します。将来的には、モデル地域での試行と改善を重ね、実践的かつ継続性のあるアドボカシー教育の標準化を目指します。
この研究は、小児科専門医の教育をより良くするだけでなく、医療者が社会とつながりながら子どものウェルビーイングを支えるための基盤づくりにも繋がります。
研究のイメージ図
期待される効果
- 全国の小児科専門研修プログラムにおけるアドボカシー教育の現状を見える化できます。
- アドボカシー教育の導入や継続を進めるうえでの障壁と促進要素を整理できます。
- 日本の医療現場に合った標準的な教育プログラム構築につながり、将来的には他の診療科や医療職種への応用も期待できます。
- アドボカシーを実践できる医療者が増えることで、地域の医療や福祉の向上や推進につながる可能性があります。
主任研究者
利根川 尚也(国立成育医療研究センター 教育研修センター 教育研修室長)
私は、小児総合診療と医療者教育学を専門として、子どものウェルビーイングを推進するための教育やプロジェクトのマネージメントを行っています。本研究を通して、日本の文化に適したアドボカシー教育の形を明らかにし、次の世代の医療者が、目の前の患者を支えるだけではなく、より良い社会創りにも関われる基盤をつくりたいと考えています。

分担研究者
【国立健康危機管理研究機構】
国立国際医療センター 救命救急センター
佐伯 壮一朗
国立国際医療センター 小児科
水野 貴基

