Spatial transcriptome解析によるシェーグレン病における口腔乾燥症の病態解明
研究概要
この研究は、国立国際医療センターと国立成育医療研究センターでシェーグレン病と診断された患者さんを対象に、診断時に採取した唾液腺の組織を「spatial transcriptome解析」という新しい技術で調べることを目的としています。
シェーグレン病は、唾液腺や涙腺が自分自身の免疫によって攻撃され、破壊されてしまう自己免疫疾患です。国内では潜在的な患者を含めると10〜30万人にのぼると推定され、自己免疫疾患の中では関節リウマチに次いで多い病気とされています。小児の膠原病の中でも比較的多くみられますが、診断が難しく、病気の特徴や仕組みについてはまだ十分に分かっていません。患者さんの約9割にみられる口の乾き(口腔乾燥症状)は、日常生活の質を大きく損なう深刻な問題です。
発症の原因には、遺伝的な要因や環境の影響など、複数の要素が関わっていると考えられています。診断のために行われる口唇生検では、唾液を作る唾液腺にリンパ球が集まり、腺組織が破壊されている様子が確認されます。これまでシェーグレン病には確立された治療法がなく、症状を和らげる対症療法が中心でした。しかし近年、研究が急速に進み、多くの新しい治療薬が開発段階に入っています。
今回用いる「spatial transcriptome解析」は、組織全体でどの遺伝子が働いているかを地図のように可視化できる革新的な技術です。細胞同士の関係や組織の構造とのつながりを明らかにできるため、病気の仕組みをより深く理解することが可能になります。私たちは診断に用いた唾液腺組織を解析し、シェーグレン病で唾液腺がどのように破壊されていくのか、その病態を解き明かすことを目指しています。
本研究は、国立国際医療センター、国立成育医療研究センター、そして国立がん研究センターが協力して進める共同研究です。
研究のイメージ図
期待される効果
- シェーグレン病の唾液腺組織を用いて、空間的な遺伝子発現解析が可能になる
- 唾液腺がどのように破壊されていくのかについての病態理解が深まる
- 新しい治療法や診断法の開発につながる基盤的な知見が得られる
主任研究者
若槻 実祐(国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センター 膠原病科 レジデント)
シェーグレン病は長らく有効な治療法がなく、口腔乾燥症状に悩む患者さんが多くいらっしゃいます。近年急速に発展している空間的トランスクリプトーム解析は、組織の中で遺伝子がどのように働いているかを可視化できる革新的な技術です。本研究を通じて唾液腺破壊の仕組みを明らかにし、病態理解を深めることで、将来の診断や治療法開発に貢献できるよう取り組んでまいります。

分担研究者
【国立健康危機管理研究機構】
国立国際医療センター 膠原病科
原田 拓弥 髙橋 広行
【国立成育医療研究センター】
腎臓・リウマチ・膠原病科
鷹木 雄飛

