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国立高度専門医療研究センター 医療研究連携推進本部

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Destination therapy患者に対する意思決定支援の効果と今後の課題

研究概要

植込型左室補助人工心臓(i-LVAD)は、重症心不全の患者さんの心臓を補助する機械で、心臓移植までの「つなぎ」として2011年から保険適用されました。これにより、患者さんは入院ではなく自宅で移植を待つことが可能になり、2021年末までに全国で約1300人が装着しています。さらに2021年からは、心臓移植ができない人向けに、i-LVADを一生使うことを目的とした治療「デスティネーションセラピー(DT)」も認められ、治療の選択肢が広がりました。

しかし、DTを選ぶということは、今後ずっと機械と共に生活することを意味し、日常生活に多くの制限があります。外出や入浴、電源管理など、患者さんや家族には大きな負担がかかります。そのため、患者さんが「どんな生活になるのか」を具体的にイメージできるように、医療スタッフによる意思決定支援が非常に重要です。ところが、先行研究では「選択肢がなかった」と感じる患者さんが多く、時間的な余裕がない中で決断を迫られるケースも報告されています。

DTは今後の人生を大きく左右する重大な決断です。だからこそ、医療者は自分たちの支援方法を振り返り、より良いサポートを目指す必要があります。術後はリハビリや知識習得が必要ですが、気持ちが前向きになれず退院が遅れることもあります。そこで当院では、DTを選んだ患者さんがどの程度術後の生活をイメージできていたかを調査し、意思決定支援の効果を検証します。

研究では、「SDM-Q-9」を用いて、DTを決断したタイミングでの患者さんの意思決定の質を評価します。さらに、「SF-8」を用いてDTを行った患者さんの生活の質(QOL)がどのように変化したのかを評価します。これらの評価内容と、DT前後の意思決定支援との関連を分析し、どのような支援がDT後のQOL向上に影響するかを明らかにします。この結果から、当院の支援の課題を整理し、今後の改善策を提案することを目指します。DT患者が納得して治療を選び、術後の生活に前向きになれるような支援体制を構築することが、私たちの重要な使命です。

研究のイメージ図

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期待される効果

  • 患者の選択プロセスの理解
    患者さんがどのタイミングで、誰と関わりながらDT治療を選んだのかを明らかにすることで、意思決定に必要な支援の内容を整理できます。
  • 効果的な支援方法の検討
    DTを選択した後、生活の質(QOL)がどのように変化したかを調べ、選択時に受けた支援との関連性を分析することで、今後DTを検討する患者さんにとってより効果的な支援方法を提案できます。
  • 患者の納得感と生活の質向上
    調査結果をもとに、患者さんが納得して治療を選び、術後の生活に前向きになれるような支援体制を構築することが期待されます。

主任研究者

大神 和也(国立循環器病研究センター 看護部 副看護師長)

私は、当院で急性期病棟から慢性期まで、多くの心臓疾患患者さんの看護に携わってきました。現在は心臓移植や重症心不全患者さんへのケアを提供しています。その経験を活かし、重症心不全患者さんが後悔のない治療を選択できる支援体制を構築することが本研究の使命です。重症心不全患者さんにおける意思決定の過程と支援の効果を明らかにし、その後の生活の質向上に貢献できるよう、責任を持って取り組みます。

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分担研究者

【国立循環器病研究センター】
看護部
永井 孝明 西岡 清香

【国立健康危機管理研究機構】
国立看護大学校
髙木 香織