20〜35歳では「胃がん」は男性より女性の方が多い
女性の健康総合センターが疾患別性差の可視化レポートを公開
~性差に合わせて適切な医療を設計する未来を目指して~
2025年9月12日
国立成育医療研究センター(東京都世田谷区、理事長:五十嵐 隆)に設置された女性の健康総合センター(センター長:小宮ひろみ)の女性の健康推進研究室(室長:森崎菜穂)とデータセンター準備室(室長:中野孝介)は、ナショナルセンター医療研究連携推進本部(JH)による「6NC連携のNDB研究基盤による重点疾患の疫学・政策研究の推進」研究グループと連携し、匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)を活用して疾患性差を可視化する研究を行い、報告書を公開しました。
その結果、胃がんは「男性に多い」という一般的なイメージとは異なり、若年層(20~35歳)では、男性より女性の方が多い傾向が認められました。また、クモ膜下出血は女性に多いとされますが、女性が多くなる傾向は年齢とともに上がっていくことが明らかになりました。さらに乳がんについては、30歳以降のすべての年齢層で女性が圧倒的に多いものの、55歳以降は男性の患者数が増加し男女差が徐々に縮小することが示されました。
本研究は、全国規模の医療保険データを用いて疾患別性差を包括的に可視化した初めての取り組みで、今後の政策立案や健康施策の基盤情報として活用されることが期待されます。
【図1:胃がんとクモ膜下出血の2疾患の有病者数男女比ヒートマップ】
<表の見方>
- 病名別・年齢階級別有病者数の男女比率を表示しています。
- 有病者数の男女比率は、女性の有病者数/男性の有病者数で示しています。
- 4倍を超える比率の場合は、最も濃い配色で表示しています。
【図2:全疾患の有病者数男女比ヒートマップ】
<表の見方>
- ➀病名別有病者数の積み上げ棒グラフ
- 病名別の有病者数を表示しています。
- 男性の患者数を水色、女性の患者数をオレンジで表示しています。
- 総有病者数の降順で表示しています。
- ➁病名別年齢階級別有病者数の男女比率のヒートマップ
- 病名別、年齢階級別有病者数の男女比率を表示しています。
- 有病者数の男女比率は、女性の有病者数/男性の有病者数で示しています。
- 総有病者数の降順で表示しています。
- 4倍を超える比率の場合は、最も濃い配色で表示しています。
- 心筋梗塞、急性大動脈解離は0~19歳までの年齢は、5歳ごとの有病者数データが存在しないため表示していません。
プレスリリースのポイント
- 女性の健康総合センター 女性の健康推進室および、データセンター準備室は、がん・糖尿病・循環器疾患・神経筋疾患の性差に関する可視化レポートを作成しました。
- 本レポートの作成では、JHの研究グループがまとめている2012年~2020年度の匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)から算出した性別・年齢階級別の各疾患の患者数などのデータを使用しました。
- 胃がんなどは「男性に多い」という一般的なイメージとは異なり、若年層(20~35歳)では、男性より女性の方が多い傾向が認められました。
- 女性に多いとされるクモ膜下出血、乳がんなどについても、年齢ごとの性差の変化パターンが明らかにされました。
- 乳がんの最も多い年齢層は近年では65歳以降にシフトしていき、また55歳以降は男女さんが徐々に縮小していくことが分かりました。
- 今後も女性の健康センターの各研究室および、データセンター準備室は、ライフコース全体を視野に入れ、さまざまなデータを活用しながら性差に着目した健康データ解析を継続していきたいと考えています
プレスリリースのダウンロード
女性の健康総合センターが疾患別性差の可視化レポートを公開 (PDF:2.7 MB)