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国立高度専門医療研究センター 医療研究連携推進本部

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神経発達症(発達障害)の神経心理・心理社会的病態モデルの構築―疾患コホートと地域コホートの両面からの検証

研究概要

この研究の目的は神経発達症(発達障害)の特徴の出やすさや、神経発達症に伴う日常生活での困難の増加の背景を成す要因が何かを明らかにすることです。そのためには、発達特性の強さと、認知機能や心理特性(不安を感じやすいかや、現在のうつ傾向の強弱など)、日常生活での困難の程度などとの関係を調べる必要があります。これらについて検討するために、現在、神経発達症の診断がある方と、ない方の双方にご協力いただきコホート構築を進めています。

自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)に代表される神経発達症は幼少期から持続して物事の捉え方(認知)や行動に特徴があり、そのため環境との不適応や日常生活に支障を感じることがあります。一方で、認知や行動の異なりがあっても必ずしも神経発達症の診断を受けるわけではありません。病院の受診が必要であると思われるものの、医療や支援に繋がらないケースも多くあります。この背景には神経発達症特性の高低に加えて様々な日常的な環境の影響があると考えられます。本研究では、地域にお住いの神経発達症の診断をお持ちでない方を対象として、神経発達症の病態仮説に関係する認知機能検査と、神経発達症傾向、不適応行動、心理症状、養育や親子の健康に関する質問紙等のデータを取得する地域コホートの確立を目標とします。私たちはこれまでに、神経発達症の診断をお持ちの方々に対して、社会的コミュニケーションに関わる機能、実行機能、時間認知機能など、神経発達症の病態仮説に関連する認知機能を検査し、それらと神経発達症傾向や精神病理などとの関係を検討する疾患コホートを構築してきました。今回構築する地域コホートにおいて、疾患コホートと同様の病態モデルが成立するのかを検証することで精緻な病態モデルの構築を目指します。更に、従来の疾患コホートでの取得内容に加えて心理社会的状況に着目することで医療的援助につながらないケースや養育の困難さに関連するリスク因子についてもモデルを構築することで、神経発達症重症化の予防方略の提言を目指します。

研究のイメージ図

研究のイメージ図_日.PNG

期待される効果

  • 心理社会的要因を含めた神経発達症の精緻な病態モデルが構築できる。
  • 疾患コホートと地域コホートとの差異を明確化することで、神経発達症診断を持つ方のみを対象とした病態モデルの問題点の有無を明確化できる。
  • 神経発達症の不適応行動や援助希求に関連する心理社会的要因を同定できる。
  • 不適応行動、養育困難、精神疾患発症などに影響する要因を明らかにすることで小児の精神保健状態の把握のために定期的に考慮すべき項目(毎年測定する質問紙など)が明確にできる。これは発達特性の高低に関わらずサポートを要している対象に介入するきっかけとなり、これらの問題の予防策の提言につながる。

主任研究者

江頭優佳(国立精神・神経医療研究センター、精神保健研究所、知的・発達障害研究部、リサーチフェロー)

神経発達症の症状は個人内外の差が大きいため、病態モデルの構築には多くの方にご協力いただき、発達特性と認知機能やその他の関係する要因について調べる必要があります。私たちはこれまでに300名以上の方にご協力いただき、神経発達症特性と病態に関連する認知機能の関係について一部を成果として論文発表しています。本研究により検討を深めることで更なる知見の創出を目指します。
主任研究者写真_NCNP江頭.png

分担研究者

【国立国際医療研究センター】
国府台病院 児童精神科
箱島有輝