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国立高度専門医療研究センター 医療研究連携推進本部

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高齢食道癌患者における術前補助化学療法中の骨格筋量喪失予防を目的とした多職種連携プレハビリテーションプログラムの開発

研究概要

近年、がん患者さんは国際的に高齢化しており、特に高齢な方ではがん治療の合併症や要介護のリスクが高いことが知られています。局所進行食道癌に対する術前補助化学療法を併用した根治的切除術は、最も治療強度の高いがん治療の一つであり、高齢がん患者さんにとって非常に負担の大きい治療です。このような背景から、特に高齢な局所食道癌患者さんでは、がん治療中の合併症や要介護を防止するためのリハビリテーションが重要です。

従来のリハビリテーションは、手術後から機能回復を促進するために実施されます。最近では、手術後の合併症や要介護を予防するために、より早期段階から手術前リハビリテーション(プレハビリテーション)が行われるようになってきました。しかしながら、プレハビリテーションは、手術前の2~4週間の短期間で実施されることがほとんどであり、効果的な介入を行うための期間は限られています。診断後早期の術前補助化学療法開始の時期から実施されることが望ましいのですが、どのようなプレハビリテーションプログラムが適切かという点は明らかとなっていません。

私たちは、高齢な局所食道癌患者さんの術前補助化学療法期間中の筋肉量の減少は、手術後の合併症や筋肉量回復の長期的な遅延、予後に関連する因子である可能性を明らかにしました。したがって、筋肉量の減少を防止するための術前補助化学療法期間中のプレハビリテーションプログラムを開発できれば、高齢な局所食道癌患者さんの治療後の合併症や要介護の発生リスクを従来のプレハビリテーションよりもさらに低減させることができると考えています。

私たちは、高齢食道癌患者さんにおける術前補助化学療法中の骨格筋量喪失予防を目的とした多職種連携プレハビリテーションプログラムの開発のために以下の2つの研究を行います。

  1. 術前補助化学療法中の筋肉量減少の臨床的メカニズム解明に向けた前向き観察研究
  2. プレハビリテーションの実行可能性を検討するための単施設単群介入研究

研究のイメージ図

研究のイメージ図

期待される効果

  • 世界初の高齢者特化型の術前補助化学療法中プレハビリテーションプログラム開発を期待できる。
  • 高齢食道癌患者さんの術後合併症や要介護発生リスクを低減できる新たな支持療法を確立できる可能性がある。
  • 開発したプレハビリテーションプログラムは、術前補助化学療法中の食道癌以外の切除可能癌患者さんや化学療法中の切除不能癌患者さんなどの広い集団に応用できる潜在性がある。

主任研究者

原田剛志(国立がん研究センター東病院 リハビリテーション科)

私はがんのリハビリテーション医療に従事する理学療法士です。これまで食道切除術後に肺炎や身体機能の低下をきたし、退院後に屋外活動が制限され、辛い想いをされる高齢な食道癌患者さんをたくさん見てきました。従来のリハビリテーションだけでは為し得なかった、食道切除術後に肺炎や身体機能低下の予防を期待できるプレハビリテーションが確立されることで、高齢がん患者さんでも安全で満足のゆくがん医療が受けられるようになると考えています。

原田 剛志

分担研究者

【国立長寿医療研究センター】
リハビリテーション科
橋本駿