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国立高度専門医療研究センター 医療研究連携推進本部

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核膜病関連疾患・臨床ゲノム情報統合データベースの新規構築

研究概要

全身のほとんどの細胞には核があり、核は袋のようにDNAを包んでいます。この袋の膜=核膜に異常が生じると、DNAが損傷を受けやすくなり、細胞の正常な働きが損なわれる可能性が高まります。核膜には単に袋としての役割だけでなく、数多くのタンパク質が集まって遺伝子を制御する「仕事場」としての役割もあるため、核膜の異常が様々な遺伝子を介して引き起こす影響はとても幅広いものとなります。

我々は核膜異常によって生じる疾患をまとめて「核膜病」と呼んでいます。しかし実際の症状は心臓(心筋症)、骨格筋(筋ジストロフィー)、さらには神経、骨と全身の様々な場所に現れ、患者さんによってバラバラです。そのため、核膜病だとすぐに分かる患者さんは少なく、それぞれの病気について別々の病院・診療科で治療を受けられていることが多い状況です。つまり、核膜病を研究するには全身にわたる病気を対象として、医療機関や診療科の垣根を越えて広くデータを集めなければなりません。

ではどのようなデータが必要なのでしょうか。核膜異常の主な原因として、LMNA遺伝子の変異が挙げられます。LMNA遺伝子は「ラミン」というタンパク質の設計図となるもので、このラミンは袋としての強度を与えるだけでなく、他のタンパク質と共にDNAの制御や修復をすると考えられています。核膜病を疑う患者さんの遺伝子を検査すると、このLMNA遺伝子の変異が見つかることがあります。我々は核膜病のメカニズム解明や治療法開発のために、LMNAを含めた遺伝子の変異情報が重要だと考えています。

そこで、本研究では国立循環器病研究センターと国立精神・神経医療研究センターが連携して、患者さんのご同意のもとで心筋や骨格筋の病気を持つ患者さんから見つかった遺伝子変異の情報を広く集めて統合し、さらに性別・年齢・どの種類の病気を持っているか・各種検査結果等といった臨床情報を付加した疾患ゲノムデータベースの構築を試みています。

研究のイメージ図

研究のイメージ図_日.PNG

期待される効果

データベースに登録された情報は、核膜病が疑われる患者さんの診断の手助けとなります。また研究者にとっては核膜病研究に応用できる情報によりアクセスしやすくなり、核膜病の原因究明・治療法の開発といった大きな目的までの道のりを加速するものと思われます。

主任研究者

石原康貴(国立循環器病研究センター バイオバンク リサーチフェロー)

国立循環器病研究センターバイオバンクでは、多くの循環器疾患患者さんから同意を得て臨床情報と遺伝学的情報を収集し蓄積しています。核膜病のように10万人に1人程度しかいないような稀な病気には、手に入る情報がとても少ないという研究上の難しさがあります。バイオバンクに集められた大規模なデータの中から、希少疾患の病態解明や治療法開発につながる鍵を見つけたいと思います。
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分担研究者

【国立精神・神経医療研究センター病院】
メディカル・ゲノムセンター
斎藤良彦