血液がんとクローン性造血関連心血管疾患の病態解明と治療法の開発
研究概要
白血病やリンパ腫などの血液のがんは、手術では取り除けないので新しい薬の開発が求められている疾患です。近年、ゲノム解析によって多様な血液がんドライバー遺伝子が明らかになりつつあります。さらに血液がん発症の素地となるがん易罹患性遺伝子や高齢者における前がん状態とも言われるクローン性造血の責任遺伝子も同定されつつあります。クローン性造血は多くの60代以上の成人に見られ、生活習慣病の一つである心血管疾患をも引き起こします。ゲノム解析によってドライバー遺伝子が明らかになっていく中で「血液がんとクローン性造血関連心血管疾患の病態」が未解明であり、「病態の理解に基づいた治療法の開発」へと繋げていく必要があります。血液がんとクローン性造血関連心血管疾患のように、同一の遺伝子異常が、異なる臓器で異なる疾患を引き起こす場合には、複数のナショナルセンター(NC)間で分野横断的に専門家集団を結びつけ、病態解明から新たな治療法の開発までのプロセスを格段に効率化する必要があると考え、本研究班を作りました。
本研究班では、乳児から高齢者まで全ての年代で発症する血液がんおよびクローン性造血のゲノムをNC横断的に全年代で解析します。すでに蓄積された大規模ゲノムデータを解析するとともに、新たに血液がん患者検体、がん感受性の先天異常症候群の患者検体、健常人のクローン性造血疑い症例を解析し、新しい発がんドライバーの同定を目指します。そして血液がん・クローン性造血関連心血管疾患の動物疾患モデルを作製し、発症機序を解明します。疾患モデルを構築できれば、既存の薬剤ライブラリをスクリーニングするとともに、新規標的に対しては新たな阻害剤やPROTAC化合物の創製を目指します。本研究では、血液がんと、クローン性造血に起因する心血管疾患について、「遺伝子異常の発見」から「病態理解」そして「創薬」までの過程を、NC横断的に協働することで、効率的に推進します。
研究のイメージ図
期待される効果
本研究において血液がん及びクローン性造血のゲノム異常について総合的な知見が得られると期待されます。特にNCCHD NCC NCGGの臨床研究者とゲノム研究者がNC横断的に機能することで全ての年代の血液がんの遺伝子変異が明らかにされると期待されます。また新たに見つかった遺伝子変異を持つ動物モデルを解析することで、疾患発症機序が明らかになり、分子標的候補が同定され、新規分子標的治療の開発につながると期待されます。また、正常造血機能、血液がん、心血液疾患を評価する実験系を持つNCGM、NCVC、NCCの研究者が共働することで、より副作用の少ない血液がん治療法や心血管疾患予防法の開発が可能になると期待されます。また、クローン性造血が心血管疾患の発症を促進するメカニズムや、生活習慣との関連に関する知見は予防法の開発に寄与すると期待されます。
主任研究者
横山 明彦
(国立がん研究センター 鶴岡連携研究拠点 チームリーダー)

私はこれまでに血液がんの発症メカニズムの解明に取り組んできました。その過程で白血病の発症に必要な分子間相互作用を見出し、それを阻害する薬の開発に関わってきました。幸運にもMENIN結合阻害剤という薬の開発に至り、現在臨床試験が進んでいます。病気のメカニズムの理解は必ず治療法の開発の手掛かりになります。本研究で多様なJH間の共同研究により、血液がんや心血管疾患に対する新しい創薬を目指したいと思います。
分担研究者
国立国際医療研究センター
幹細胞生物学・血液学 田久保 圭誉
国立循環器病研究センター
心血管モザイク研究室 佐野 宗一
国立がん研究センター
研究所がん進展研究分野 吉田 健一
国立成育医療研究センター
遺伝診療科 小崎 里華
国立長寿医療研究センター
血液内科部 勝見 章

