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国立高度専門医療研究センター 医療研究連携推進本部

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加齢性疾患の発症予測や予後改善を目指した、脳の炎症・免疫機能の評価

研究概要

脳の炎症や免疫の状態を可視化し、加齢に伴う病気の予防と治療を目指す

現在、アルツハイマー病などの認知症や、手術後などに意識が混乱する「せん妄」、さらには肝臓の病気に伴って脳の機能が低下する「不顕性肝性脳症」など、加齢に伴いリスクが高まる様々な病気において、「脳内の炎症」や「免疫機能の異常」が深く関わっていることが明らかになってきています 。これらの疾患では、脳を守る役割を持つアストロサイトやミクログリアといった細胞が過剰に活動したり、逆に機能が低下したりすることで、病状を悪化させていると考えられています 。しかし、生きている方の脳内で、これらの細胞がいつ、どこで、どのように変化しているかを正確に捉える方法は、これまで十分に確立されていませんでした 。

本研究では、国立長寿医療研究センターを中心とする複数のナショナルセンター(NC)と、国立健康危機管理研究機構が強力に連携し、この課題の解決に挑みます 。具体的には、最新の画像診断技術である「PET検査」と、ごく微量な成分を検出できる「高感度な血液検査(SIMOA法)」を組み合わせ、脳内の炎症や免疫の状態を精密に「見える化」します 。

2025年から2028年までの3年間で、各NCが専門とする認知症、せん妄、肝性脳症の患者さんを対象とした調査を実施します 。最新のPET検査薬を用いることで、脳内で炎症を引き起こすアストロサイトの活性化やミクログリアの密度変化を画像として捉えます 。同時に、血液検査によって脳の状態を予測できる「目印(バイオマーカー)」の信頼性を検証します 。

本研究の成果により、病気が発症する前の早期発見が可能になるだけでなく、脳の炎症や免疫を調整する新しい治療薬の開発が大きく進むことが期待されます 。全国の高度専門医療機関がそのリソースを結集することで、精度の高い診断体制を構築し、誰もが健康で長く暮らせる社会の実現に貢献します。

研究のイメージ図

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期待される効果

  • 新しい治療薬の開発が加速します
    これまで不明だった「脳の炎症」が病気に与える影響を解明することで、炎症を抑えたり免疫を調整したりする、今までにないタイプの新しい治療薬の開発につながります 。

  • 精度の高い「早期発見」が可能になります
    高感度な血液検査や最新の画像診断(PET検査)により、病気が進行する前の非常に早い段階で脳の異変を捉えることができるようになります 。

  • 一人ひとりに最適な診断体制が整います
    複数の高度専門医療機関が連携して正確な測定データ(基準値)を確立することで、全国どこでも高い精度で脳の健康状態を評価できる体制が構築されます 。

  • 健康寿命を延ばし、社会の課題を解決します
    認知症だけでなく、高齢者の急な意識混乱(せん妄)や肝機能低下による脳の不調を防ぐことで、自分らしく元気に暮らせる期間を延ばすこと(健康寿命の延伸)に貢献します

主任研究者

木村 泰之
(国立長寿医療研究センター研究所・認知症先進医療開発センター・脳機能画像診断開発部 副部長)

木村

私は長年、脳内の免疫を担う「ミクログリア」を生きている人の脳で可視化するためのPET薬剤開発に心血を注いできました 。脳の炎症は認知症だけでなく、せん妄や肝性脳症など多くの加齢性疾患の鍵を握っています。最新の画像技術と血液検査を組み合わせる本研究は、病気の進行を予測し、新たな治療の扉を開くための挑戦です 。この連携を通じ、一人ひとりに最適な医療を届け、健やかな長寿社会の実現に貢献したいと考えています 。

分担研究者

国立精神・神経医療研究センター

臨床脳画像研究部 髙野 晴成

国立循環器病研究センター

放射線部 福田 哲也

国立がん研究センター

精神腫瘍科 小川 朝生

国立健康危機管理研究機構

国立国際医療研究所 肝炎・免疫研究センター 肝疾患研究部 松田 道隆