後天性性染色体変化に焦点を当てた加齢性疾患の病態解明と予防法開発
研究概要
本研究の目的は、加齢に伴って生じる性染色体の変化に焦点をあてて、疾患の原因を突き止めることです。性染色体とはX染色体とY染色体を指します。これまで、男性のすべての細胞には44本の常染色体に加えてX染色体とY染色体が1本ずつ、女性の細胞には常染色体の他に2本のX染色体が入っていて、これは生涯変わらないと考えられてきました。また、女性では2本のX染色体のうち1本が働かないように抑えられている(「X染色体不活性化」と言います)と単純に考えられてきました。しかし近年、一般人の性染色体の数や形に個人差があり、さらにライフステージで変化しうるとわかってきました。とくに高齢の男性では、しばしば体のあちこちの細胞でY染色体が脱落することが判明しました。また、女性のX染色体不活性化の効果には個人差があることもわかりました。このような染色体の変化は、遺伝子発現の変化を招き、身体機能に影響を与える可能性があります。
本研究では、このような加齢性の性染色体の変化が健康とどのように関係するかを調べます。具体的には、各国立高度専門医療研究センター(NC)の病院を受診してバイオバンクに登録していただいた肺がん、認知症、アルツハイマー病、心不全などさまざまな疾患の患者さんの性染色体の数や形を調べます。この結果を、これらの疾患にかかっていない同年代の方々の結果と比較して、染色体変化がどのように進み、どのような疾患のリスクと関与するのかを明確にします。さらに、喫煙や肥満などの環境因子が性染色体変化を促進するかどうかを調べます。この研究には、次世代シークエンサーによる染色体解析など最新の手法を活用します。これまでに開発されているさまざまな解析方法を検討し、正確に性染色体変化を捉える方法を確立します。国立高度専門医療研究センターが連携してたくさんの方の解析をすることにより、確実な成果の獲得が期待されます。
研究のイメージ図
期待される効果
- 現在の性染色体の状態から将来の疾患を予想する手法が開発されると期待されます。この成果は、さまざまな加齢性疾患の予防法や重症化防止法の開発につながります。
- 本研究の成果は、加齢性疾患の原因解明に役立ちます。
主任研究者
深見 真紀
(国立成育医療研究センター 分子内分泌研究部 部長)

私たちは、胎児期から成人期までのさまざまな疾患の遺伝学的原因を探る研究を行っています。最近の国内外の研究により、性染色体の数が年齢とともに変化し、健康状態に影響を与えることが見出されました。本研究では、国立高度専門医療研究センターを受診された患者さんのご協力をいただき、性染色体変化と疾患の関係を解明します。本研究の成果は、加齢性疾患の予防法開発につながると期待されます。
分担研究者
国立成育医療研究センター
分子内分泌研究部 秋葉 和壽
国立がん研究センター
臨床ゲノム解析部門 白石 航也
国立循環器病研究センター
バイオバンク/ゲノム医療部門 朝野 仁裕
国立長寿医療研究センター
メディカルゲノムセンター 尾崎 浩一
国立精神・神経医療研究センター
訪問看護ステーション 吉田 寿美子
国立健康危機管理研究機構
国立国際医療センター
脳卒中センター 井上 雅人
エイズ治療・研究開発センター 土屋 亮人

