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国立高度専門医療研究センター 医療研究連携推進本部

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臨床表現型-神経心理評価-脳構造画像データからなる神経発達症のレジストリ構築と病態解明

神経発達症(発達障害)は脳の働きに基盤を持つ、物事のとらえ方や行動のパターンの違いによって診断されます。しかし、同じ診断の当事者でも特性のパターンは様々ですし、複数の神経発達症が精神疾患を持ち合わせることもあります。本研究では、発達障害の病態を解明するため、臨床表現型‐神経心理評価‐脳構造画像データから成るレジストリの構築を進めています。このようなレジストリ構築は世界各国で進められていますが、発達障害の特性や日常生活での困難には遺伝的要因や生活環境が影響することが知られています。それゆえ遺伝的背景や社会構造に違いがある各国・地域における成果それぞれが疾患の理解に非常に重要であると考えられます。

本レジストリでは、心理検査や質問票への回答、核磁気共鳴画像(MRI)の撮像によって、症状の多様性(臨床表現型)、認知的な特性(神経心理評価)、脳の器質的特徴(脳画像データ)を集めています。臨床表現型として、発達障害の特性の程度に加え、行動上の特徴や抑うつ・不安などの周辺症状の程度を計測しています。神経心理評価では、心理学的な手法を用いて、症状や日常生活での困難と関連する可能性のある複数の認知特性を評価しています。また、脳構造画像データとして白質・灰白質の容積や神経線維束の揃い方に関する情報を収集しています。

この研究が進むことで、客観的かつ定量的に評価可能な指標(脳構造・認知機能)に基づき、発達障害の症状や臨床的な多様性を説明することが期待されます。これにより、発達障害の多様性を形作る神経心理学的メカニズムが明らかにできる可能性があります。さらに、学術的なエビデンスに基づく診断補助のバイオマーカーや介入法の開発への発展も期待されます。

研究のイメージ図

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期待される効果

  • 臨床症状及び認知機能と結びついた脳画像データベースの確立

  • 神経発達症の臨床症状及び認知機能と関連する脳の器質的特徴への示唆を提供

主任研究者

林小百合(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所、知的・発達障害研究部、リサーチフェロー)

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これまでの積み重ねにより、発達障害についてたくさんのことが分かってきました。一方で心理学的病態仮説が複数存在するなど、発達障害はいかなる病態なのか、いまだ謎が残されていると感じています。地道に着実にデータを集めていくことで、その多様性を明らかにしたいと考えています。そして、先人の築いてきた"巨人の肩"に根差した当事者・社会に還元できる研究成果への発展を目指します。

分担研究者

国立国際医療研究センター
国府台病院 児童精神科
黒河内敏成